急性心筋梗塞の薬物療法まとめ

急性心筋梗塞時の薬物療法についてまとめました。

急性冠症候群 緊急 PCI時

※PCI:経皮的冠動脈インターベンション。ステント留置が一般的。

抗血栓薬

  1. アスピリン未使用の患者にはPCI 施行前にアスピリン100mg2錠〜3錠を咀嚼服用させる。
  2. プラスグレルやクロピドグレルなど未服用の患者にはPCI 施行前にアスピリンと併用してプラスグレル (商品名:エフィエント)20mgを投与する。

ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の投与が必要となります。

PCI開始時に抗血栓薬が効いている状態であるために、抗血小板薬未使用の患者には PCI前に負荷投与を行います。

プラスグレルはクロピドグレルよりも効果発現が早いという特徴を有しており、クロピドグレルと比べてPCI後3日以内の心血管イベントを有意に減らすというエビデンスを持っています。そのため、クロピドグレルよりもプラスグレルが使用されることが多いようです。

抗凝固療法

  1. PCI 施行時にアスピリンと併用しながらへパリンを使用
  2. ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の患者に対しては、アルガトロバンを使用する。

ヘパリン投与後、HITの発症を予測、診断するために、血小板数を測定します。

約3%にHITが発症するとされ、血小板が10万以下になった場合は注意する必要があります。

PCI後、入院中の薬物管理

抗血小板薬

  1. PCI後無期限にアスピリン100mg1錠を経口投与する。
  2. アスピリンと併用してプラスグレル3.75mg/1日を経口投与する。

アスピリンとプラスグレルの併用療法のことをDAPT療法と呼ばれています。

消化管出血予防のために、抗血小板薬と一緒にPPI(ランソプラゾールなど)も服用します。

β遮断薬

  1. β遮断薬の経口投与を行う(メトプロロールなど)

β遮断薬は心拍数、心筋収縮、血圧を減らし、心筋壊死を防ぐために、投与されます。

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬

  1. 禁忌のないすべての患者に対して ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬の投与を考慮する
  2. ACE阻害薬使用できない方にARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を使用

ACE阻害薬・ARBにより心臓の拡大を軽減することで、多くの人の生存の可能性を高めます。

Ca拮抗薬

  1. 冠攣縮がみられる患者に使用する。

Ca拮抗薬は血管のけいれんを抑える作用があるので、β遮断薬と併用して使用されます。

ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)は血圧を下げるだけではなく、心拍数を抑える作用があります。

硝酸薬、ニコランジル

  1. 虚血症状が改善しない患者に対してニトログリセリンを舌下投与する
  2. ニトログリセリン舌下投与に続いてニトログリセリンを静脈投与する

硝酸薬は静脈血管を拡げることで静脈冠流量を減らし、心筋の酸素需要を減らします。(前負荷の軽減)

また動脈血管も拡げることで、心筋への酸素供給を増やします。(後負荷の軽減)

スタチン

  1. スタチン使用していない患者に対してストロング・スタチンを追加投与する

まとめ

  1. PCI前には抗血小板薬の負荷投与を行う
  2. PCI後DAPT療法を行う
  3. β遮断薬、ACE阻害薬、スタチンを追加する

私なりにざっくりとまとめたものとなります。
施設や主治医によって治療方法が異なることもあると思いますし、
間違っている場合もありますので、ご了承ください。
ご自分でもしっかりと調べた上で、ご指導・ご判断をお願いいたします。

参考文献

  • 急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)
  • 2020 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版
    冠動脈疾患患者における抗血栓療法